Introduction
岡本兄弟社が運営するSOLAKZADE® THE LAST STORE® の精神と美学を詰め込んだカルチャ 一誌『HEMDEMIT (ヘムデミ)』。
ヴィンテージアイウェア、ジュエリー、ウォッチの専門店として知られるSOLAKZADE®、THE LAST STORE®。私たちはしばしば、"ヴィンテージファッション"という括りで解釈されます。
しかし、私たちの本質は、そうした退屈な括りを逸脱したところにあります。固定観念を越えた両店舗の体験を、廃れつつある"紙の書籍"という形に落とし込む。それがHEMDEMIです。
店舗でのパーソナルな体験を、純粋な形で読者に届けたい。
その思いから執筆から撮影、スタイリングに至るまで、制作の大半を社内のチームのみで作り上げ、広告も掲載していません。
発行は、岡本兄弟の友人 小野典秀氏が率いる株式会社 托口出版から。
創刊号では、ヴィンテージアイウェア、ウォッチ、ジュエリーについてはもちろん、対談や人物評まで、パラレルに岡本兄弟社の世界観を体現しています。
撮り下ろしのヴィジュアルは、大阪府立中之島図書館から、日本最古のキャバレー「ミス大阪」まで、大阪に根付く、"雅俗"が入り混じるカルチャーにフォーカスしました。
なお本書は古書等に掛けられている「グラシン紙」で巻かれ、さらには古い製本⽅法を再現した「アンカット製本」で作成。
ペーパーナイフ等を用いて切り開き、1⾴ずつじっくりと読み進めるための仕掛けを施しました。
「雑誌」にも関わらず何重にも固く閉ざされた本書は、単なる情報の消費物としての書物ではなく、記憶に刻まれ、時折読み返す悦びのある本に仕⽴てられています。
試し読み
創刊号を抜粋にて紹介。宇宙のように広がるHEMDEMI™の世界を体感ください。
ジュエリーのありかた
祈り、力、愛、絶望、慈悲、諦め。
歴史の中で、人々はモノに込められるほとんどすべての事柄を、ジュエリーとして仕立ててきた。
地中から現れた絶対性。朽ちることなく、輝きを秘めたまま人知れず眠っていた鉱物たちは、ある時。”あらわれる”。
それは絶対的な力であり、畏れ敬われるべきものであった。どの時代、どの文明をとっても。権威とジュエリーは不可分であり、しばしば神からの贈り物とされた。
限られた生を謳歌せんとする私たちとは全く異なる振る舞いをみせる金や宝石に、あなたは何を感じるのだろうか。
文明の始まりから私たちと共にあるジュエリーの面白さは、その絶対性に何を感じ取るか、何を込めるか、という問いだ。
ほとんどの場合、その絶対性には権威や豊かさを見出す。ジュエリーを身につけることはそれの誇示にほかならない。
その一方で、しばしばジュエリーは私たち一人ひとりの、世界へのありかたとの表明としても用いられてきた。それはときにささやかで、またときには劇的であった。
例えば、かのローマ皇帝ネロの退廃的な幾つかのエピソードだ。
スマラグドゥス(エメラルドを含む緑の宝石)をくり抜いてつくられたレンズを備えた、サングラスで剣闘を観戦したことは有名だ。
当時、水晶をくり抜き、金や宝石で装飾された盃で酒宴に興じることは最も高貴な人間のみに許された愉しみであった。
しかし、混沌とした治世の最期を悟ったネロは、自身の持つ最も見事な水晶の盃2つを、他の人間が使うことができないように、怒りとあきらめを込め地面に叩きつけたと言われている。
ネロらしい逸話は、後世の脚色の可能性を踏まえてもなお、魅力的で、狂乱の皇帝にふさわしい美を放っている。
“グランド・マドモワゼル“ココ・シャネルにもいくつかのエピソードがある。
当時の恋人、ウェストミンスター公爵とコート・ダジュール沖に船で滞在しているとき、公爵の浮気が原因で口論となった。満月に照らされる中、見事な大粒のエメラルドを携えてシャネルに謝罪したが、彼女はそれを手に取ると海に向かって投げ捨てたという。
男性からどんなに高価なジュエリーを贈られても、自らの信念にそぐわなければ、それを打ち捨ててしまう。
そんな彼女は、値段や価値を伴わない、純粋に女性の創造性だけを表現するためのジュエリーをつくり出していく。金や宝石ではなく、イミテーション素材で仕立てられたコスチューム・ジュエリーだ。
彼女はこう語っている。
「たまたま金持ちだからって、首に何百万ドルもぶら下げて歩くなんて、おぞましい。私が偽物のジュエリーを好きなのは・・・・・・挑発的だから。」
─Vaughan Hal, Sleeping with the Enemy: Coco Chanel’s Secret War, Alfred A. Knopf, 2011
独立自尊の気概をもったココ・シャネルの反逆。ジュエリーは男性から贈られる、もっといえば、男性に価値を決められる女性という構図を痛快に打ち破り、まったく新しい概念を世に投げかけたのだろう。
※続きは本誌にて
Ne supra crepidam
まもなく建設から100年を迎えようとする芝川ビル。
大阪の淀屋橋駅からすぐ日本では珍しい、マヤ・リバイバル様式の佇まいは、時空を超えたどこかへ私たちを誘うかのようだ。
芝川ビルの2階、当時の応接室だった202号室にオープンしたのは、”Ne supra crepidam”。神戸に工房を構える、レザーシューズブランドSHOE & SEWN 初の直営店舗だ・
同ブランドの靴は、ウィメンズを中心にメンズもラインナップ。柔らかな造形と、あじわいのある革の表情、そして軽やかな履き心地が特徴だ。
実直な靴づくりで知られ、日本以外にも世界各国にファンがいるものの、これまで直営店はなかった。
※続きは本誌にて
HEMDEMI no.1/August 2025
発刊日
2025年8月31日
判型等
A4変形版(縦300mm×横220mm)、フルカラー96頁、アンカット製本、ドイツ装
価格
6,666円(税込)
ISBN978-4-910850-06-1
C0070